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2019/11/23 23:48

ぎーーーーーーーっ。ガタンっ!


大分県日田市の中心部から山奥に進むこと30分。
日田市の北部にある皿山地区のあちらこちらから、響き渡る音が聞こえてきます。

ここは、小鹿田焼(おんたやき)が作られている小さな集落。集落全体が、小鹿田焼の里という名称で呼ばれています。


とても心地よい澄んだ空気を思い切り吸い込みながら散策していくと、川辺にはさっきから聞こえてくる音の源を発見。
谷川の水流を利用して土を粉砕している唐臼の音だったのです。


小鹿田焼(おんたやき)は、開窯された江戸時代から蹴りろくろ、登り窯など、生産工程のほとんどが開窯当時の姿を保っていると言われているほど、機械に頼らず自然の力と人の手によって原始的な方法で作られている焼き物。現在10軒の窯元があるのですが、そのすべての窯元で。全国的に見ても、集落全体でこのような昔ながらの手仕事で取り組まれているのは、他地域を探してもないのではないでしょうか。

川の水を利用した唐臼で2週間程度かけてつきあげた原土を水に浸し、こしてから鉢に移して乾燥させます。これもすべて手作業。

下準備だけでも多くの時間を費やして、様々な工程が踏まれていきます。

陶芸の世界は、陶芸家を志す方の勉強の場として弟子の受け入れをされている窯元が多い中、小鹿田焼は外部からの弟子を一切採らず、原則的に長男だけが家業を継ぐ一子相伝で技術や伝統を守り続けているのも小鹿田焼の特徴です。このことから小鹿田焼の陶芸家は、国の重要無形文化財国保持団体に指定されているのです。

この地区は山、土、川に囲まれており、木材は窯焼きの燃料に使われ、土は陶土に、川は棚田や陶土を砕く動力となり、「自然と文化が一体化した地域特有の景観」をつくりだしてきました。
その風景は重要文化的景観として認定され、国としても保護し続けていくべき景観とされているのです。

その集落のほぼ中心に位置し、共同登り窯の隣にある黒木昌伸窯は、今年お父様から世代交代をされたばかりの昌伸さんによって作られています。

笑顔が印象的で物腰しの柔らかな昌伸さん。
昌伸さんの作る器は、小鹿田焼らしさの中にも自由で表情豊かな模様に温かみを感じます。
力強くもあり、どこかダイナミック。筒描きがモダンな雰囲気にも。

器、カップ、花器など、少しずつ様々なアイテムを集めたくなるほど、昌伸さんの魅力に引き寄せられていきます。